今しぼり(育てる醤油)
世界一新鮮な醤油
のどかな里山で流れる穏やかな時間とともに、昔ながらの製法で醸す醤油はうまみを増していく。熟成に要する期間は2年。効率化が求められる時代の流れにあえて逆行することで、日本の代表的な調味料である醤油に付加価値を生み出す。乳酸菌や酵母が生きたままのもろみを搾って使う〝世界一新鮮な醤油〟は、高級旅館などから高い評価を得ている。
設立は2017年。志賀郷地区に移住した多田晃社長(67)ら9家族が、地域に子育て世帯の収入につながるような仕事を創出しようと立ち上げた。事業に選んだのは、大豆と小麦、塩、麹だけを使う本来の醤油造り。商品を通して、自然の中で食と向き合う志賀郷の生活を表現する。「昔は日本の村々で造られていたような本物の醤油を広めていきたい」と力を込める多田社長に話を聴いた。
昔ながらの製法で余分なもの加えず
なぜ創業されたのですか。
移住前は大阪の高校で教壇に立っていましたが、「自分が食べるものを自分で作って生きていこう」と考えて早期退職しました。移住後、Iターンした人たちと交流を重ねるうちに感じたのが仕事の問題です。米や野菜などの食べ物は自分たちで作ったものがありますが、子育て世帯はある程度の現金収入が必要となります。自然豊かな志賀郷での生活に合った仕事を模索したところ、頭をよぎったのは以前から関心があった醤油造りでした。
どのように醤油を造っていますか。
原料の大豆や小麦は国内で農薬を使わずに栽培されたもので、一部に志賀郷で作られたものも含みます。昭和の時代から広がった効率的な製法では3カ月もあれば醤油ができ、あとで不足するうまみ成分を足していますが、弊社は余分なものは加えず、昔ながらの造り方でじっくりと時間を掛けて熟成させ、うまみを引き出します。
生きたままの乳酸菌や酵母が味わう
販売する商品は。
大きく分けて3つあります。まず、社名の由来でもある「今しぼり醤油」。もろみの状態で販売し、食卓で搾ってもらいます。搾りたてを味わう〝世界一新鮮な醤油〟です。そして、簡単に醤油造りが楽しめるように大豆と小麦、麹を混ぜた醤油麹などをセットにした「育てる醤油」、搾ったもろみをオイル漬けにした「食べる醤油」です。いずれも乳酸菌や酵母が生きたままの状態で味わえるのが特長です。「健康に良い」「手づくり」「生きている」ということを大事に考えています。
販売先は。
綾部では、あやべ特産館(青野町)で販売していて、市外では京都市の複合商業施設「グッドネイチャーステーション」などで取り扱いがあります。海外からの引き合いもあり、昨年にはニューヨークとハワイに出荷しました。城崎温泉(兵庫県豊岡市)や夕日ケ浦温泉(京丹後市)、天橋立(宮津市)では、今しぼり醤油が高級旅館に採用されました。「おいしい」という評価とともに、料理の提供時に目の前で搾ることにより「お客さんが驚き、会話のきっかけになる」と喜ばれています。
注目の商品は。
育てる醤油です。新型コロナウイルスの影響で旅館向けの今しぼり醤油は売り上げが落ち込みましたが、多くの人が自宅で過ごす時間が長くなったため、育てる醤油はネット販売で注文が増えてきました。自宅で昔ながらの醤油を造ることができ、時間とともに変化する味わいを体感できます。
思い描く将来ビジョンは。
地域の役に立ちたいです。大きな規模は無理でも地元で安心して働ける場になれば、これから大人になっていく子どもたちを綾部に引きとめることができ、住民は子どもや孫と離れずに暮らせます。持続できるだけの稼ぎを得ながら、地域に貢献できる会社でありたいです。
今しぼり
綾部市篠田町小西5
電話 0773-21-6831
ホームページ