移住立国あやべ

綾部からの声Voice

平田是志さん「忙しい田舎暮らしを満喫」【志賀郷地区】

以前住んでいた場所:京都府宇治市

現在の住所:綾部市篠田町

移住の時期:2023年11月

世帯構成:単身

是志さんは1973年生まれ

 

程良いバタバタ感を楽しむ日々

京都府宇治市から志賀郷地区の篠田町に単身で移住した平田是志さん。親しい友人からは「つなっしー」の愛称で親しまれています。
綾部での生活は、よく言われる“のんびり田舎暮らし”とは正反対。仕事や農作業で多忙な毎日です。でも平田さんは「程良いバタバタ感」と満ち足りた笑顔を見せます。

玄関前に立つ平田さん

 

「ありがとう農法」との出会いが転機に

31年間勤めた大阪ガスを早期退職して移住しました。移住を考えるきっかけとなったのは45歳のときに出合った一冊の本。この「大地がよろこぶ『ありがとう』の奇跡」(村上貴仁著、サンマーク出版)を読んで自然農を知り、農や食に対する考え方が根本から変わりました。
それから数年間、淡路島で「ありがとう農法」、マイファームで有機農法、赤目自然農塾で自然農を次々と学んで実践しました。

この本との出合いが人生の転機になった

どうして会社を辞める決意を固めたのですか?

40代半ばには管理職を務めていたのですが、現場時代のようなやりがいが感じられず、10年先が見えてしまったのです。妻に「定年を迎えるまで会社に留まるつもりはない」と率直な気持ちを話すと理解してくれ、「もう大企業の仕事が安泰な時代ではない」と応援してくれました。

 

移住先に綾部を選んだのはどうしてでしょう?

食に対する考え方が変わったときに若杉友子さんの著書を読んで衝撃を受けたのです。野草料理で食養を説く、綾部の奥上林の人。「若杉ばあちゃん」の愛称でよく知られていますよね。それが綾部への入り口になりました。

次第に移住への思いが高まって綾部に通い始めたとき、宿泊先の農家民宿「ぽかぽか農園」を経営する櫛田寒平さんとの出会いがありました。先輩移住者である櫛田さんの田んぼで仲間たちと米作りをさせてもらい、櫛田さんの米作りのやり方(自然栽培)をいいなと思ったのです。

※「ぽかぽか農園」は現在は営業していません。

 

この家はどのような方法で見つけましたか?

移住への決意が固まったので、綾部市の空き家バンクで古民家を探しました。その中で気になった物件を10軒ほど見て回り、価格やエリア、附帯設備などがもっとも条件に合ったのが現在の家でした。

自宅正面から。向かって左には作業スペースや米用の冷蔵庫などがある。移住とともに軽トラックも購入。

 

裏に回ると薪ストーブの煙突が目を引く。

 

手前の納屋と奥の蔵もついている。

 

リノベーションを急ぎたかったので床張りなどは大工さんに任せましたが、自分でも壁の珪藻土塗りや2階への階段作りをやりました。大工仕事は経験がありましたし、2級建築士の資格も持っています。

屋根裏も改修して使えるようにした。階段はDIY。

 

居間には選びに選んだネスタ―マーティン社の薪ストーブを設置し、囲炉裏も作って、とても気に入っています。

「綾部には1台しかないと思う」というネスタ―マーティン製の薪ストーブ。ホーローでできたこげ茶色の外装が気に入っているそうだ。

 

平田さんがとても気に入っているという囲炉裏は新たに作ったもの。自在鉤は近隣の雑貨商から購入。古民家に似合う調度品などもオークションで手に入れたり、知人から譲ってもらったりして上手に揃えた。

 

 

ここでの暮らしはいかがですか?

現在、妻と長女は宇治市、次女は神戸で暮らしており、私は綾部で一人暮らしです。「それぞれが好きなことをやっていく」というのが家族の総意なので、いつか綾部に住みたくなったら来てくれれば良いと思っています。

綾部で出会うべくして出会ったのが、同じ町内で醬油製造・販売を営む「今しぼり」の多田晃社長です。私も醤油や味噌、梅干し作りの経験があり、多田社長と意気投合して、自然な流れで「今しぼり」で働くことになりました。現在は週に3日程度、営業と事務を担当しています。
また、綾部の無形文化財の保存、継承、活用を進める「森の京都文化観光サポーター」としても活動しています。

母屋の隣には食品加工などを行うスペースを設けました。味噌や梅干しなどを仕込む場所として重宝しているそうです。

もちろん無肥料・無農薬の米作りや野菜作りにも力を入れています。これまで学んできたのは、機械を使わずに体を動かすやり方。だから今もできるだけ機械を使わない方法でやっていますが、まったく苦になりません。

平田さんはこのエリアの一角で米作りをしている。山からの豊かな水で美味しい米ができる。

 

さらに、2025年中には自宅で農家民宿の開業も計画しています。ますます忙しくなりますが、不満はまったくなく、とても充実しています。
唯一の不安と言えば、農家民宿などの仕事を軌道に乗せられるかなということです。暮らしをきちんと黒字化していきたいですからね。

ここではご近所さんが良い人ばかりで、いつも気軽に声をかけてくれます。移住者と壁を作らずに接してくれるのがありがたく、ここに住んで良かったと思っています。