蓮ヶ峯農場(農畜産)
純国産鶏「もみじ」にこだわった「平飼いたまご」で、食への関心が高い消費者のニーズをつかんできた八津合町の蓮ケ峯農場が今年、転換期を迎えます。それは農業への挑戦です。
農場主の峰地幹介さん(34)は昨年、父親の代から35年間続けてきた「個人事業」に区切りを付け、京都市内を中心にオーガニックスーパーなどを展開する株式会社ヘルプ(本部・京都市)との共同出資による株式会社「For youふぁーむ」を設立。現在は新会社の事業として農場を続けています。
同社の強みは、鶏を「生きもの」として尊重する手間暇をかけた飼育方法を追求しつつ、しっかりと利益を確保して持続可能なビジネスとして成り立たせる経営のバランス感覚。
養鶏技術だけにとどまらない同社の流通から小売りまでの経営ノウハウを希望者に提供し、新規就農や産地支援につなげようというのが、今年からの新たな試みです。中山間地域の農業の未来の在り方を提案しようと準備を進める峰地さんに、今の思いを尋ねました。
中山間農業の未来に提案
なぜ今、農業なのですか。
私は父の他界がきっかけで8年前に経営を引き継ぎ、養鶏一本からスタートしました。おかげさまで現在は7棟の鶏舎で3千羽を飼い、毎日1千個の卵を販売できるまでになりました。鶏糞を処理したり、採卵期を過ぎた親鶏を食肉として売り切ったりする点において、個人で責任が持てる規模としてはこれが限度です。
また事業拡大を考えた時、養鶏は周辺住民の皆様にどうしてもご負担やご迷惑をお掛けするので新規では困難です。そこで、私たちのノウハウを生かして中山間地域の未来のためにできることとして考えたのが農業でした。
手間が掛かってもおいしいものを
中山間地では耕地面積の狭さや獣害など条件が不利だと思いますが、勝算は。
上林地域でも好条件の農地は担い手として大規模農家さんがおられます。それに対して、私たちが手掛けたいと考えているのは効率の悪い農地です。
私たちは「おいしいもの」に付加価値を付けて売ることを得意としています。例えばうちは1個20円以下でも売られる卵を、100円以上で買っていただいています。昨年は試しに3反(3千平方㍍)で米を作りましたが、納得できる出来だったので親会社系列のスーパーで販売したところ、1㌔700円でもすぐに完売しました。いずれは1㌔1千円以上で売りたいと考えています。
今年は農地を2㌶に広げる予定です。手間が掛かってもおいしいものを作って適正な価格で売れば、やっていけるはずです。
今年からの農業には、どんな方が携わられるのですか。
コロナ禍によって田舎で農業をしたいという方が増え、問い合わせも多くあります。しかしいきなり田舎で暮らしていける訳ではないので、うちで研修を受けて独立できれば理想ですし、軌道に乗るまでは私たちが販路の仲介もできます。
またアイデアの一つとして、今年は子どもたちと一緒に田植えから収穫、販売までを行う場を作りたいと考えています。特に誘いたいのは、様々な事情で学校や保育園に行きづらいというような子たち。フリースクールみたいな場にできればと思います。
最後に将来のビジョンをお聞かせください。
養鶏業で苦労する親の姿を見て育ったので、初めは勤め人の方が良いと思っていました。しかし今は、農場を継いで本当に良かったと思っています。SNSの普及で情報発信も容易になり、農業で生きていける時代になりました。その農業で暮らせる人材を増やすことで中山間地を何とかできるよう、新事業を3年くらいである程度形にしたいと思っています。
綾部市八津合町別当2番地1
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