味処 桃太郎
新鮮な魚 お手頃価格で
店に入ると目に入るのは木曽桧の一枚板の白木カウンター。店主の村上行男さん(64)が、わざわざ岐阜県にまで出向き品定めした自慢の品だ。コロナ禍で大人数での飲食は難しくなり、密にならないよう気を使いながらの営業だが、信頼のおける仲買人から仕入れる新鮮な魚介はカウンターとともに店の売り。
これを昼の定食(税別1千円前後)、夜の一品料理、会席料理(同3千円から)、すしにふんだんに使っているが、価格は手頃と人気を集める。
今年で開店31年という村上さんに話を聴いた。
原点は親孝行で始めた食事作り
料理人を志した理由を教えてください。
私は男ばかり4人兄弟の2番目です。家は農業をしており、繁忙期には両親とも忙しくしていました。そこで、小学校高学年のころ母親孝行をしようと食事作りを買って出ました。今思えば、カレーや焼きそばなど我流の簡単な料理でしたが、私が作った料理を兄弟や親がおいしいと言ってくれたのがとてもうれしく、本格的に料理をしてみたいと思いました。
中学卒業後は大阪のふぐ料理店で修業し、その後、明石市の和食店で10年ほど勉強させてもらいました。地元に帰ってからは大江町のうどん店でそばやうどん作りの修業をしました。
開店から31年だそうですが、長く続けられる秘けつは何ですか。
派手なことをせず、常連さんを大切にすることだと思います。
知り合いには、知名度アップのためにお金を払って情報番組で自分の店を取り上げてもらった店もあります。放送直後は遠方からも来店があり、店はにぎわいますが、にぎわえばにぎわうほど常連さんの足は遠のくようです。放送を見て店を訪れた人はその場限りでリピーターになることもなく、ブームが去ったあとは一見客も常連さんも来なくなり、閉店した店もあります。なので、地道にコツコツが一番大切なことだと思っています。
魚料理ならある程度の要望に応えられることも長続きの秘けつかもしれません。前もっておっしゃってもらえれば、珍しい魚も用意しますし、メニューになくても希望の調理方法で提供することも可能です。お客様が「わがまま」を言える店だということも魅力になっているように思います。
また、これは店を開いて5年ほどの時のことですが、阪神淡路大震災の被害の様子を映したテレビの生中継で、修業時代の兄弟子の店の近くが燃えているのを見ました。1週間ほどあと、店を訪ねましたが、やはり店は焼失していました。兄弟子は再建に奔走したようですが、かないませんでした。
この時、兄弟子の分まで頑張って店を続けようと思ったのを覚えています。なのでコロナウイルスには負けられません。
常連さん大切に地道にコツコツと
店の人気メニューは何ですか。
特製巻きずし(同600円)です。修業をしていた明石の店の味をそのまま引き継いだもので、卵をたっぷり使った卵焼き、焼き穴子、シイタケなどを使っています。しいたけの下ごしらえだけでも1日以上の手間をかけたこだわりの味です。
持ち帰りも可能で、今年の節分には200本以上のご予約を頂きましたし、巻きずしだけをお求めになる常連さんもいらっしゃいます。
店の今後はどのように考えておられますか。
一日も早くコロナが収束し、店が宴会のお客様でまたにぎわえばと思いますが、こればかりは、コロナが収束しないと難しいですね。でも、これまで通りお客様を大切にコツコツ頑張っていきたいです。
味処 桃太郎
綾部市若松町7―2
電話 0773-42-8690
綾部市観光ガイド