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【ふるさと探訪】聖塚・菖蒲塚古墳(多田町)

市内初の国指定史跡

綾部市内で初めて国指定史跡(重要文化財)となったのは多田町にある聖塚ひじりづか菖蒲塚あやめづかの両古墳。指定は1992(平成4)年5月なので、2番目の私市円山きさいちまるやま古墳(私市町)より2年早い〝先輩〟だ。

方墳としては全国的にも最大規模を誇る聖塚。

聖塚の近接地にある菖蒲塚。

古墳時代中期の2つの方墳

120mほど離れて立地している両古墳は、古墳時代中期(5世紀の前半)の方墳。

聖塚の方が菖蒲塚より一回り大きい。菖蒲塚が先に造られて、あとから聖塚が造られたようだ。両古墳とも築造当時の形状をよく残しており、多くの古墳群が形成されている由良川中流域の中でも大型方墳として古くから注目されてきた。

綾部市資料館で展示されている吉美盆地の5世紀の景観の想像図と出土品。

1891(明治24)年に聖塚が採掘された際には鏡や玉、兜、鎧、刀剣、勾玉まがたま、ガラス玉などが出土している。

1917(大正6)年の測量調査を経て、周囲のほ場整備計画に伴い綾部市教委は1983(昭和58)年に古墳の周囲の水田部分を発掘調査。その結果、古墳の周囲の堀である周濠と、墳丘の規模が明らかになった。

 

聖塚古墳は全国的にも方墳で最大規模

聖塚は東西が54.2m、菖蒲塚は32.3mのいずれも方墳であり、二つとも南側に造り出しがある。

うち菖蒲塚の造り出しは東側が2段に突出する特殊な構造。葺石ふきいし埴輪はにわの存在も含め大型の前方後円墳と同じような築造手法が取られている。

特に聖塚は方墳としては全国的にも最大規模を誇り、由良川の中流域ではこの時代の核となるような古墳。近接して、しかも近い時期に築造されていることから、二つの古墳に葬られているのは2代にわたる首長ではないかと推測される。

この地方には1千基を超える古墳があるとされるが、これほど大きく、しかも極めてよい保存状態で残っている古墳はごくわずか。昔から有名であることから、かえって最近は注目されていない両古墳だが、「さすが国指定史跡」と思わせる雄姿を、いつも私たちに見せてくれている。

 

参考文献
府埋蔵文化財情報第21号(1986年9月)
綾部市史(上巻)
府史蹟勝地調査会報告第1冊(1919年)
あやべ歴史のみち(2000年)

 

Vol.13に続きます。