【田舎暮らし豆知識】「とくし丸」は玄関まで来てくれる移動購買車
レポート:朝倉聡(あやべ市民新聞社)
田舎暮らしに伴うテーマのひとつは、買い物事情だ。
田舎には小さな雑貨屋さんが残っている場合もある。まとまった買い物に関しては、店舗に自動車などで買い物に行くほか、在宅で予約型の買い物として「京都生協」や「よつばグループ」などと契約する方法もある。地元のさとうグループも、事前注文型の宅配スーパー「バザールネット」を展開している。
もうひとつの切り口が、移動購買車の利用だ。さとうグループは巡回スーパー「フレッシュ・ゴー!」を展開し、綾部市内の所定のエリアを回っている。ここでは「とくし丸」について紹介したい。
三ツ丸ストア(本社・福知山市)が「とくし丸」(本社・徳島市)と提携して展開する移動購買車だ。私の幼い頃は、農協(JA)の移動購買車「むつみ号」が市内を巡回していた。「ツートンカラーに着飾って今日も来た来たむつみ号」の歌が心に残っている。「むつみ号」は2020年12月で業務を終えた。
一方、「とくし丸」は三ツ丸ストアが個人事業主(パートナー)への委託で運営する。三ツ丸ストアは、綾部の呉服商3人が合同で創業した三ツ丸百貨店に源流があり、むつみ号が以前の農協の移動購買車であることと合わせ、綾部の豆知識だ。
「♪かあさん・おばあちゃん・子どもにワンワン・みんな集まる・仲間が寄ってくるとくし丸――」。
テーマソングが聞こえてくると、冷蔵庫つきの専用軽トラに生活必需品を満載した「とくし丸」の到着だ。食料品だけでなく日用品もある。綾部の場合、5号車の田畑博さん、8号車の朝子道男さん、9号車の樋口ひとみさんが分担して市内を巡回している。
集会所などに駐車して不特定の人に買い物に来てもらうパターンもあるが、とくし丸の本領発揮は、必要とする各個人宅での販売だ。高齢化や運転免許の返納など、遠路での買い物に行けない事情はさまざまで、個人宅であれば商品の実物を見て選びながら買い物ができる。基本的には担当者が商品を見つくろって積載しているが、希望の商品を伝えれば三ツ丸ストアの在庫の範囲で次回以降に積んできてもらうことも可能だ。
私は記者として2022年2月4日、栗町から小貝町、小西町にかけて9号車の樋口さんに同行させて頂いた。樋口さんは、かつては「むつみ号」の担当者で、「とくし丸」に変わってからも利用者の需要をよく把握している。明日から雪だから保存のきく食品を買いだめしたい、という声があれば、それに応じて商品を提案し、要領よく棚から取り出して、高齢の利用者が用意した買い物袋に入れていく。冬場は雪かきスコップも必ず携帯して巡回している。
節分の季節は、あらかじめ予約があればその分の巻き寿司を積んで届ける。正月のおせち料理、土用の丑のうなぎなど、季節に応じた予約商品が常連ユーザーにはちらしで案内される。
とくし丸の軽トラには、「中丹ふるさとを守る絆ネット推進事業」のラベルも貼ってある。地域の見守り隊としての役割も伴っており、会話の機会を増やしたり、住民が元気に暮らしているか見守ったりする役割もある。とくし丸の利用の機会は高齢者に限らない。田舎暮らしの強い味方になるはずだ。
巡回対象エリアは市内の大部分をカバーしており、まずは三ツ丸ストア本部(0773-23-4123)に希望場所などを伝えて相談頂きたい。週2回の巡回が基本で、日時は調整のうえ決まる。移動購買車以外では、農協の売店を継承した地域密着型の売店が市内にいくつかあるが、それらの紹介は次の機会としたい。【あやべ市民新聞社・朝倉聡】